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外国人を雇用するときの社会保険完全ガイド|加入要件・手続きと注意点を社労士目線で徹底解説

目次

はじめに

近年、労働力不足の解消やグローバル人材の活用を目的として、多くの企業が外国人の雇用を進めています。

しかし、「社会保険の加入は必要なの?」「在留資格があれば自動的に加入?」といった制度の理解不足が原因で、誤った対応や法令違反が後を絶ちません。

本記事では、外国人労働者を雇用する企業が押さえるべき社会保険制度の基本から、加入手続きの実務、在留資格との関係、特殊ケースへの対応、さらにトラブル事例や効率化のヒントまでを社労士目線で徹底解説します。初めて外国人を雇用する企業も、すでに受け入れを進めている企業も、この記事を読めば「何をすべきか」まるわかり!

外国人雇用でも社会保険は必須|基本の理解と適用範囲

国籍や在留資格にかかわらず、適法に雇用されている外国人労働者にも、日本の社会保険制度への加入義務があります。制度概要と適用範囲のルールをまず整理し、判断基準の全体像を把握しましょう。

外国人労働者にも社会保険加入義務あり

外国人労働者であっても、日本国内で雇用される場合、原則として日本人と同様に社会保険への加入義務が生じます。対象となる保険制度は以下の4つです。

  • 健康保険(全国健康保険協会や健康保険組合など)
  • 厚生年金保険
  • 雇用保険
  • 労災保険

これらは、労働時間・労働日数が要件を満たす限り、国籍や在留資格にかかわらず原則適用されます。

例えば、週の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがあれば、雇用保険の加入対象です。また、健康保険・厚生年金についても、週30時間以上または「特定適用事業所(501人以上)」で要件を満たす場合は加入が義務となります。

在留資格と加入条件の関係性

社会保険の加入要否は「在留資格」ではなく「労働実態」によって判断されます。就労可能な在留資格を持っていれば、原則として社会保険の対象となります。たとえば、「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「技能実習」などの資格で就労している場合、労働条件が要件を満たせば保険加入は必須です。

一方、「短期滞在」や「留学」「家族滞在」など、原則として就労が制限されている在留資格での労働は違法就労となる可能性があり、保険適用以前の問題となります。

また、特定技能や技能実習生には、日本と社会保障協定を結んでいる国の出身者もいます。社会保障協定が締結されている場合、相手国の制度と重複することを防ぐ目的で「適用除外証明書」の提出によって日本の厚生年金保険の加入が免除されるケースもあります。

さらに、外国人が退職・帰国する際に、厚生年金に加入していた期間の保険料の一部を「脱退一時金」として請求できる制度もあります。制度を理解し、就業前に説明することでトラブル防止にもつながります。

加入要件一覧と事業所タイプ別の判断基準

企業規模や雇用形態により社会保険適用の可否は異なります。雇用される側(労働者)だけでなく、企業側(事業所)の性質によっても変わってきます。

ここでは、強制適用事業所かどうか、どのような労働条件で加入が義務になるのか、具体的な要件を分かりやすく整理します。

社会保険の適用事業所は、以下のように区分されます。

強制適用事業所

法人(株式会社・合同会社など)は、常時1人以上の従業員を雇用している限り、強制的に健康保険・厚生年金の適用対象となります。個人事業所であっても、一定の業種(飲食店、サービス業など)で常時5人以上を使用していれば同様に適用されます。

任意適用事業所

一定の条件下で、従業員の同意を得て日本年金機構に申請すれば、社会保険に加入できる事業所です(例:個人経営の小規模事業者など)。

外国人を雇用する際、たとえ短時間勤務であっても、企業側が「強制適用事業所」であれば社会保険への加入義務が生じます。

「うちは小規模な会社だから」と思っていても、法人形態であれば強制適用対象になる点に注意しましょう。

「適用対象者」と「適用除外者」の整理

外国人労働者が社会保険に加入すべきかどうかは、勤務形態や労働時間・雇用見込み期間によって判断されます。以下のような整理が重要です。

適用対象者の例

  • 週30時間以上勤務の外国人正社員・契約社員
  • 「特定技能」「技人国」などの在留資格で働くフルタイム勤務者
  • 一定の条件下で勤務するパート・アルバイト(例:501人以上の企業で週20時間・月額8.8万円以上 かつ2ヶ月超勤務見込み)

適用除外者の例

  • 留学生で週28時間未満の労働
  • 観光目的など就労不可の在留資格
  • 所定労働時間・日数ともに短く、適用基準に満たない場合

学生アルバイトについては、労働時間が短い上に「学生である」ことが理由で、厚生年金・健康保険の適用除外となるケースがあります。ただし、雇用保険や労災保険は別の基準で判断されるため、総合的な確認が必要です。

具体的な社会保険手続きフロー

外国人労働者を雇用する際の社会保険手続きは、原則として日本人社員と同様に行います。ただし、在留資格やマイナンバー未取得など、外国人特有のケースでは追加対応が必要な場合があります。

健康保険・厚生年金の加入手続き

外国人社員を雇用した際は、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を年金事務所または加入している健康保険組合に提出します。

必要書類と注意点

  • 被保険者資格取得届(基礎年金番号またはマイナンバーを記載)
  • 在留カードの写し(就労資格確認用)
  • 「ローマ字氏名届」:マイナンバー未取得時や、ローマ字表記と漢字氏名の整合が取れない場合に提出(※日本年金機構にて外国籍者向けに推奨)

特に来日直後でマイナンバーが未通知の場合は、基礎年金番号のみで手続きを行い、後日マイナンバーが付与されたタイミングで追加入力します。健康保険証は手続き完了後に発行されますが、マイナ保険証の利用も可能です。

雇用保険の加入手続き

雇用保険については、「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークへ提出します。提出先は事業所所在地を管轄するハローワークで、オンライン(e-Gov)申請も可能です。

提出書類と留意事項

  • 雇用保険被保険者証(前職がある場合)
  • 基礎情報(氏名、生年月日、性別、在留資格)
  • 労働条件通知書の写し

初めて日本で働く外国人には雇用保険番号がないため、新規で番号が付与されます。前職の雇用保険証を提出してもらえる場合は、番号転記によりスムーズに手続きできます。

労災保険の適用範囲と注意点

労災保険は、雇用形態や国籍を問わず、日本国内で労働するすべての労働者に適用されます。そのため、外国人を1人でも雇用する場合には自動的に対象となり、特別な加入手続きは不要です。

注意点

  • 海外から日本へ出張させる場合や、国内で短期就労させるケースでも、業務災害が発生した場合には労災保険の対象になります
  • 在留資格上「就労不可」とされている外国人(例:観光ビザ)は労働そのものが違法のため、労災適用対象にならない場合があります

特有ケース別の対応ポイント

外国人雇用においては、標準的な社会保険手続きだけでなく、労働者の在留資格や勤務状況に応じた特有の対応が求められます。ここでは、実務上よくある特殊ケースについて解説します。

外国籍・在留資格非所持者の対応

外国籍であっても、在留資格を持たない者(オーバーステイなど)を雇用することは、法律違反にあたる可能性があります。そのため、雇用前には必ず在留カードを確認し、在留資格が「就労可」であることを確認しましょう。

万が一、マイナンバーが未取得である場合は、「基礎年金番号」で社会保険の届出を行い、あわせて「ローマ字氏名届」を提出することで手続きを進められます(※マイナンバーは後日追加入力が必要)。

また、外国人を新たに雇用した場合には、ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」が義務付けられています(労働施策総合推進法)。入社日から翌月の末日までに提出しましょう。

越境リモート/海外居住者の社会保険加入

近年は「海外に住みながら日本の企業に常時勤務する」越境リモートワークの事例も増えています。こうした場合、日本の会社に常時雇用され、勤務時間・報酬が一定基準を満たしていれば、たとえ居住地が海外でも社会保険の加入対象となります。

ただし、次のような留意点もあります。

  • 介護保険は日本に住民票のある40歳以上が対象となるため、海外居住者は原則として対象外
  • マイナンバー未取得者の対応:社会保険の届出は基礎年金番号ベースで行い、後日追加入力
  • 多国籍企業との兼務:二以上事業所勤務届が必要な場合も

制度の解釈が分かれるため、実務上は年金事務所や社労士への事前相談が推奨されます。

特定技能・学生アルバイト・短期就労者の扱い

外国人雇用において特に相談が多いのが、「特定技能」「留学生のアルバイト」「短期労働者」に関する社会保険加入の可否です。

区分社会保険加入の目安
特定技能1号フルタイム勤務なら原則加入対象
留学生アルバイト週20時間未満であれば適用除外が多い
短期就労(2ヶ月以内)原則適用除外
ただし延長予定がある場合は注意

特定技能や技術・人文知識・国際業務の在留資格でフルタイム雇用する場合は、日本人と同様に健康保険・厚生年金・雇用保険のすべてに加入する必要があります。

一方、週20時間未満で働く留学生アルバイトなどは、労働時間・契約期間などによって加入義務の有無が変わるため、個別判断が必要です。

トラブル回避とQ&A集

外国人の社会保険加入は、日本人とは異なる前提が多いため、思わぬトラブルや誤解が発生しやすい領域です。ここでは、実務でよくある事例や注意点をQ&A形式でまとめます。

よくあるトラブルと対応例

外国人本人が社会保険への加入を拒否しているが、加入させなくてもよいか?

「NO」です。日本の法律では、一定条件を満たす労働者には国籍に関係なく社会保険加入が義務付けられています。本人の希望や意思に関係なく、加入させないまま雇用を続けると、企業が違法行為とみなされるリスクがあります。

外国人のマイナンバーや基礎年金番号が不明で、手続きが進まない

マイナンバーが取得できていない場合でも、基礎年金番号や在留カード番号、ローマ字氏名での手続きが可能です。年金事務所に相談のうえ、ローマ字氏名届を併せて提出することで多くの手続きが進められます。

提出書類にローマ字名の記入ミスがあり、処理が却下された

外国人の場合、ローマ字氏名の正確な表記が必要です。パスポートに記載された氏名と一致していない場合、エラー扱いになることがあるため、書類作成前に確認を徹底しましょう。

労務管理でよくある誤解・勘違い

  • 在留資格が「技術・人文知識・国際業務」でも、実務内容が資格外活動に該当する場合は違法
  • 在留期限が切れていないかの確認を怠ると、不法就労助長罪に問われる可能性あり
  • 社会保険証の有効性を在留カードと一緒にチェックしないと、保険の利用不可となることも

こうした誤解は、労務担当者の知識不足や書類チェックの甘さから発生します。在留資格と就労内容が一致しているかを常に確認し、更新時期のリマインドや記録管理を徹底することが重要です。

加入義務違反・虚偽記載による罰則事例

外国人雇用に関しては、法令違反が企業の責任として問われる可能性があります。

  • 社会保険未加入が長期間続いた場合:未納保険料の遡及徴収(最大2年分)+延滞金
  • 故意の虚偽記載や報告漏れがあった場合:健康保険法などに基づき、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金

トラブルを未然に防ぐためには、正しい知識とルールに基づいた入社手続きの実行が不可欠です。必要に応じて社労士・行政書士などの専門家と連携しましょう。

社会保障協定・脱退一時金制度とは?

日本で働く外国人にとって、母国の社会保障制度との重複加入は大きな問題です。こうした状況に対応するために設けられているのが「社会保障協定」や「脱退一時金制度」です。ここではそれぞれの制度の概要や利用方法、実務上の留意点について解説します。

制度の概要と対象国一覧(2025年時点)

社会保障協定とは、外国人が日本と母国の両方で年金保険料を二重に支払うことを回避し、将来的に年金の受給資格を調整するために締結される国際的な取り決めです。日本は2025年時点で以下の主要国と協定を結んでいます。

  • 米国・イギリス・ドイツ・フランス・韓国・オーストラリア・中国・フィリピン・インド・ブラジルなど、計24カ国以上
    (参考:日本年金機構「社会保障協定を締結している国」)

これにより、一定期間の年金加入歴を母国と通算できたり、日本での加入義務が免除されたりするケースがあります。

利用のメリットと手続き方法

社会保障協定を活用するメリットは主に以下の2点です。

  • 二重加入の回避:母国で社会保険に加入している期間、日本での加入が免除される場合があります。
  • 年金受給資格の通算:母国と日本での保険加入期間を通算し、年金受給資格を得ることができます。

利用には、日本年金機構または母国の社会保障機関を通じた「加入証明書(証明書A)」の提出が必要です。協定の有無や詳細条件は国ごとに異なるため、確認のうえ対応しましょう。

脱退一時金の概要と実務対応

脱退一時金制度は、社会保障協定を結んでいない国の出身者が、日本での年金保険料を納めたまま帰国する場合に、一定額を請求できる仕組みです。

【対象者の条件(日本年金機構より)】

  • 日本国籍を有しないこと
  • 厚生年金保険・国民年金の被保険者資格を喪失していること
  • 最終納付日から2年以内であること
  • 保険料納付期間が6ヶ月以上あること

請求は帰国後に、脱退一時金請求書(英文書式あり)を日本年金機構へ郵送することで可能です。外国人労働者本人が直接請求するため、入社時・退職時に制度の存在を説明しておくと親切です。

外国人雇用×社会保険を効率化する方法

外国人を雇用する際の社会保険手続きは、日本人社員と同様に基本的な法令遵守が求められる一方で、言語の壁や在留資格確認など独自の対応が必要になるため、煩雑になりがちです。ここでは、事務負担やミスを減らすための効率化の方法を3つの視点から紹介します。

社労士・行政書士との連携のメリット

外国人雇用の社会保険対応は、在留資格の判定や社会保障協定の確認、ローマ字氏名の登録など専門知識が必要な場面が多くあります。そのため、社会保険労務士(社労士)や行政書士との連携が大きな助けになります。

社労士は保険加入要件の判定や適切な申請手続きのアドバイス、各種届出の代行まで対応可能です。特に複数の国籍の従業員を抱える企業や、技能実習・特定技能など複雑な在留資格を扱う企業では、「相談できる外部専門家の存在」が心強い支えになります。

また、行政書士は在留資格関連の書類作成や出入国在留管理庁への申請手続きを代行できます。在留資格の更新が遅れて社会保険証の発行に支障が出る…といった事態を防ぐためにも、社内と外部専門家の連携体制を整えておくと安心です。

 社労士による安心サポートをご希望の方へ 

外国人雇用における社会保険の手続きは複雑で専門性も高いため、労務担当者だけでは対応しきれないケースも少なくありません。

スポット社会保険労務士法人では、外国人の社会保険加入や在留資格確認、多言語対応の書類作成までワンストップでサポートしています。

労務管理システム・給与ソフトでの自動化導入

外国人雇用の手続きでは、「書類の記載ミス」や「提出遅れ」が原因でトラブルになるケースも多いため、ITツールの活用が推奨されます。

たとえば、以下のような機能を備えた労務管理クラウドシステムを導入することで、作業効率が飛躍的に向上します。

  • 自動申請機能:社会保険の資格取得届や雇用保険加入届をオンラインで自動送信
  • アラート通知機能:在留資格の有効期限やマイナンバー未提出などの状況を通知
  • 多言語対応:本人向けの説明資料や申請書類の多言語フォーマット出力

こうしたシステムは、外国人従業員本人にも分かりやすく手続き内容を伝えることができるため、社内だけでなく従業員サイドの混乱防止にもつながります。

入社時のチェックリスト・書類テンプレート活用法

外国人雇用に特化したチェックリストや書類テンプレートを整備することで、事務の標準化・平準化が実現します。

以下のような資料を準備しておくと便利です。

  • 社保・雇用保険加入の対象者チェックリスト
  • 在留カード・資格外活動許可などの確認項目リスト
  • 被保険者資格取得届、ローマ字氏名届などの記入例付きテンプレート
  • 英語・中国語・ベトナム語対応の説明文書(制度概要・提出書類一覧)

これらの資料を「外国人雇用ハンドブック」としてまとめておけば、新入社員の受け入れ時や社内教育の際にも活用しやすく、属人的な対応を減らすことができます。

まとめ|企業が今すぐ取り組むべきアクションリスト

外国人雇用においても、社会保険の適切な手続きは企業の重要な責任です。制度の違いや書類の特性により対応が複雑になることもありますが、基本を押さえたうえで以下のポイントを押さえれば、安心して受け入れが可能です。

  • 加入条件の整理と判断フローの整備
  • 必要書類のチェックリスト化と期限管理
  • 在留資格やマイナンバーなど外国人特有の対応整理
  • 制度説明や書類案内の多言語対応

こうした対応を仕組み化することで、ミスを防ぎ、外国人従業員との信頼関係も築けます。対応に不安がある場合は、社会保険労務士など専門家への相談も有効です。

スポット社労士くん社会保険労務士法人では、外国人雇用に関する社会保険手続きの効率化を支援しており、安心して任せられる体制が整っています。

最終更新日

最終更新日:2025年10月17日

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