▼2025年3月14日以前に新規登録された方
今さら聞けない!就業規則の基本

1.そもそも就業規則とは?
就業規則とは、会社のルールブックです。従業員(以下「労働者」)の人数によって必要な対応が異なりますので、以下で確認しましょう。
【常時10名以上の労働者を雇用する事業所】
→就業規則の「作成」義務と、労働基準監督署への「届出」義務があります。
作成届または変更届の提出を怠った場合、30万円以下の罰金が科せられます。
★もっと詳しく知りたい方向け
・労働者にはパート、アルバイトなど事業場で働くすべての労働者が含まれます。
・「常時10名以上」とは10名以上の労働者が所属していることを指します。例えば、繁忙期に期間限定でアルバイト・パートを雇うなど、一時的に10名を超えるような場合は「常時」とは言いません。派遣労働者は派遣元の従業員として考えるために人数に含みません。
・「常時雇用される労働者」には労働監督者も含まれます。労働監督者とは労働条件の決定その他労務管理などについて経営者と同等の決定権を持ち、労働基準法で定められた労働時間・休憩・休日の制限を受けない人を指します。
・「10名以上」とは企業全体ではなく、事業所ごとの人数です。
例えば、本社に10名、支店に10名働いている場合、本社と支店の就業規則をそれぞれ作成し、管轄の労基署に届け出なければなりません。事業所内で内容が共通している場合には、各拠点の就業規則を1か所の労基署にまとめて届け出ることも可能です。
【常時10名未満の労働者を雇用する事業所】
→ 法律上、作成・届出の義務はありません。
ただし、作成して申請すれば、正式な就業規則として認められます。
2.なぜ必要なの?
「就業規則とは何か」を理解した上で、なぜ必要なのでしょうか?
近年、従業員を守るための法律が成立・施行され、従業員の「自分たちは守られている」という意識も高まっています。したがって会社に対しても、法律に違反せず、安心安全な経営を運用するためのルールが求められます。
就業規則は、従業員と会社との間に起こる様々なトラブルから会社を守るために欠かせないものです。
【就業規則の不備によるトラブルの一例】
①社員がメンタル疾患になった時
勤勉な社員が、ある日、「『○○』(メンタル疾患)の疑いがあり、数か月の休養を要する」という趣旨の診断書を提出しました。
診断書がある以上は働かせるわけにいかないということになりますが、ルールがないと以下について困ってしまいます。
・いつまで休みを認めるべきか
・休んでいる間の連絡はどうするか
・治らなかった場合の措置はどうするか
・休ませる間の給与の扱いはどうすべきか
・給与から控除している社会保険料の扱いはどうすべきか
「想定外の事態」を想像して、就業規則で備えておくことが大切です。
②社員からハラスメント被害の相談を受けた時
ハラスメントに対する世間の関心は高まる一方で、どのような規模の会社でも人が集まる以上は避けて通りないテーマです。
実際に社員からハラスメントに関する相談があったときの対応の仕方を「事前に把握」し、「ルールを社員に周知する」ことが重要です。この点が整っているか否か、というところで会社の姿勢が問われます。
また、就業規則がないと実現できないこともあります。
【就業規則がないとできないこと】
①懲戒処分(解雇、出勤停止、給与の減額など)
懲戒処分を執行するためには、処分の根拠(理由)をあらかじめ就業規則に定めておかなければなりません。
②助成金の受給
「キャリアアップ助成金」など、就業規則の提出が受給条件となる助成金が多数あります。
3.なぜ社労士に作成を依頼するべきなのか?
実は就業規則は、社長・役員でも作成できるものです。
就業規則の内容には、必ず記載しなければならない3つの事柄があります 。
-
- 始業および就業の時刻、休憩時間、休日、休暇、(交替制の場合は)就業時転換に関すること
- 賃金の決定、計算・支払いの方法、賃金の締切り、支払いの時期、昇給に関すること
- 退職に関すること(解雇の事由を含む)
「たった、これだけ!?」と思うかもしれませんが、その他のルールについては、会社によって必要なルールを個別に考えます。
★さらに詳しく知りたい方へ
必須事項①の中には、育児・介護休業法により、次の項目を就業規則に記載する必要があります。
・育児休業・介護休業、子の看護休暇・介護休暇の「付与要件(対象となる労働者の範囲)」
「取得に必要な手続き」「期間」
・育児休業・介護休業期間、子の看護休暇・介護休暇中の「賃金の支払いの有無」
育児・介護休業法の規定範囲は多岐に渡るため、就業規則本体とは別に「育児休業規程」として定めることが可能です。その場合も、就業規則の一部として「届出」が必要です。
事業所によって記載するか判断する事項は次の8つです。
- 退職手当に関すること
- 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関すること
- 食費、作業用品などの負担に関すること
- 安全衛生に関すること
- 職業訓練に関すること
- 災害補償、業務外の傷病扶助に関すること
- 表彰、制裁に関すること
- その他全労働者に適用されること
社労士事務所に就業規則の作成を依頼すると、相場として20~30万円程度の費用が掛かります。高額な費用を払ってまで、わざわざ専門家にお願いする必要はあるのでしょうか?
それはズバリ、社労士が作成したほうが「安全・安全」だからです。
労務管理という本業ではないところに多大な時間と労力を割くのは、惜しいです。法令や世間相場からかけ離れたルールを作ってしまう恐れもあります。
しかも、就業規則は何度も作り直す必要があります。頻繁に起こる法改正に対応しなければならない他、企業の成長段階によって組織の在り方や従業員の考え方などは日々変わるためです。いちいち変更するのは面倒くさいですよね。
そんな時こそ、私たち社労士の出番!専門家として法令遵守はもちろんのこと、ご希望を伺いながら貴社オリジナルの就業規則を作成いたします。
4.まとめ
ここまで、就業規則について解説いたしました。スポット社労士くんでは、就業規則の作成はもちろん、社労士による労務相談も承っております。
5.おまけ:就業規則の「周知」も忘れずに!
「作成」と「届出」を行っただけでは、就業規則の意味はありません。
就業規則が法的効力を持つためには、就業規則をその事業所で働く労働者に対して「周知」させる、つまり、就業規則の存在とその内容を従業員に知ってもらうことが重要です。
以下の2つの場合、どちらが有効だと思いますか?
・届け出ていないが、従業員全員が知っている(周知されている)就業規則
・届け出ているが、従業員が誰もその内容を知らない(周知されていない)就業規則
実は、有効なのは前者(届け出ていないが、皆が知っている就業規則)の方であるとされています。
過去の裁判では、就業規則の届出をしていなくても、周知された就業規則は法的効力を持つとされています。(コクヨ事件)。逆に言えば、届出がなされているとしても、従業員に周知させる手続きが取られていない就業規則は、法としての拘束力を持たないのです。(フジ興産事件)。
【周知の方法】
- 各作業場の見やすい場所に掲示する、もしくは備え付ける
- 書面で労働者に交付する
-
電子データとして記録し、労働者がその記録を常時確認できるようにパソコン機器を書く作業場に設置
→スポット社労士くんでは就業規則共有サービス「RULE SHARE」をご提供しています。
また、就業規則は時代に合わせて改定を続ける必要があります。労働関係法令の改正に対応することはもちろんですが、企業の成長段階によっても組織の在り方や従業員の考え方などは変わっていきます。
さらに知りたい点・ご不明な点等がありましたら、下記までお気軽にお問合せください。
【受付】平日10:00~19:00
※ご相談内容によっては、有料の労務相談に切り替える場合がございます。
※「記事を見た」とお伝えください。
電話 03-6272-6183 メール info@spot-s.jp
- 【監修】社会保険労務士 河崎
- 早稲田大学大学院修了後、リコーグループのシステムエンジニアを経験。理系人生から一念発起して社労士を目指すことになり、3回目の受験で社労士試験合格した。広島県広島市出身のカープファン。