労働問題
2024.05.27
【カスハラだけじゃない】経営者・人事労務担当者が押さたい、ハラスメント30種と対策
「『ハラスメント』なんてとっくに知っているし、日ごろから気を付けている」という、経営者・人事労務担当者の方は多いかもしれません。
それでは「ハラスメント検定」として、男女お笑い芸人「ラランド」が今年3月に発表した、YouTube動画「ハラスメントクリ男」をチェックしてみましょう。
いくつのハラスメントを見つけることができるでしょうか?
ララチューン『ハラスメント全クリ男』(「ラランド公式」YouTubeチャンネルより)
実は動画のどこにも「答え」はありません。
つまり、視聴者によって「答え」の数は違うのです。
何が「ハラスメント」になるのか分からない点が、この問題の難しいところです。
本記事では、人事労務担当者を悩ますハラスメントの種類とその対策について解説します。
実はこんなにある!ハラスメント30選
ハラスメントにはたくさんの種類があります。
相談件数が多いのは30種のうち、どれでしょうか??答えを予想しながら、以下のハラスメントを見ていきましょう。
ハラスメント30選
①アルコールハラスメント(略称アルハラ)
「罰ゲーム」や上下関係を利用して飲酒を強要する、飲めない人をからかう、「一気飲み」、酔って絡む
②エアーハラスメント(エアハラ)
寒がっている人がいるのにエアコンの温度を下げる、エアコンを使わせない
③エイジハラスメント(エイハラ)
年齢を理由に仕事の割り振りを決める、年齢と結婚・妊娠・出産を結びつける、「ゆとり世代」と括る
④カスタマーハラスメント(カスハラ)
客が店員を怒鳴りつける、取引先のミスに対して土下座を要求する、コールセンターに対して同じ質問を繰り返す
⑤カラオケハラスメント(カラハラ)
歌が苦手な人に対して歌うことを強要する
⑥ケアハラスメント(ケアハラ)
介護休業を申請した、または申請認定後の従業員に対して、不当な降格や減給、配置換えを行う
⑦ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
「男らしい」「女らしい」のふるまいを求める、性別を理由に仕事を割り振る、LGBTQの社員をからかう
⑧スメルハラスメント(スメハラ)
不快な体臭・口臭、たばこ、強烈な香水、柔軟剤の臭いを漂わせる
⑨セカンドハラスメント(セカハラ)
ハラスメントを受けて、助けを求めた相談相手や加害者からさらに嫌がらせ、悪意のある言葉を受ける
⑩セクシュアルハラスメント(セクハラ)
昇給・昇格の条件として性的な行為を求める、性的な内容の話をする、食事や外出にしつこく誘う
⑪ソーシャルハラスメント(ソーハラ)
「いいね」を強要する、写真や動画を無断で投稿する、しつこく連絡先を聞く
⑫テクノロジーハラスメント(テクハラ)
IT初心者に嫌味を言う、IT初心者に専門用語を使って説明する、IT初心者に難しいスキルが必要な仕事を割り振る
⑬ノイズハラスメント(ノイハラ)
大声で電話をする、指示の声が不必要に大きい
⑭パタニティハラスメント(パタハラ)
男性が育休取得を希望するときに拒んだり不当な降格・昇格を条件に設定したりする、日ごろから「育休取得をしないように」等と発言する
⑮ハラスメントハラスメント(ハラハラ)
進捗確認の声掛けを「仕事が遅いゆえの嫌味」等と勘違いして訴える、「趣味は?」などと何気ない声掛けをプライバシーの侵害として訴える
⑯パワーハラスメント(パワハラ)
蹴る・殴る、無能扱いする言葉を浴びせる、一人では対応できない量の仕事を割り振る、無視・嫌がらせをする
⑰ブラッドハラスメント(ブラハラ)
「A型なのに几帳面ではない」などと評価する、採用時に血液型を聞く
⑱マタニティハラスメント(マタハラ)
育休取得を拒む、日ごろから妊娠・育休取得をしないように諭す、時短勤務者に対して「繁忙期なのに楽でいいね」等と嫌味を言う
⑲マルハラスメント(マルハラ)
チャット等の文末に「。」を使うことで相手に冷たい印象を与える
⑳モラルハラスメント(モラハラ)
自分のミスを認めない、GPS付き携帯等を使って部下の行動を監視する、他人の悪口ばかり言う
㉑リストラハラスメント(リスハラ)
しつこく退職を勧める、自主退社をさせるために配置転換や仕事量を増減して嫌がらせをする
㉒リモートハラスメント(リモハラ)
カメラ画面に映る家の中を見てプライベートなことを指摘する、カメラを常時ONを強要する、業務時間外にもチャットでの返信を求める
㉓レイシャルハラスメント(レイハラ)
外国人と日本人の待遇に差をつける、国や民族を侮辱する
㉔ロジカルハラスメント(ロジハラ)
相手の言い分を聞かず一方的にミスを指摘する、正論を一方的に伝えて自分以外の意見を聞こうとしない
㉕お祝いハラスメント
同僚にめでたいことがあった時にお祝い金や物品等を強要する
㉖時短ハラスメント
定時退社を強要する(従業員は仕事を家に持ち帰る)、残業代を支払わない
㉗リクルートハラスメント(リクハラ)
面接で回答を無視する・高圧的な態度をとる(圧迫面接)、就活をやめることを条件に内定を出す
㉘独り言ハラスメント
独り言を連発して、周囲の集中力を下げる
㉙不機嫌ハラスメント(フキハラ)
挨拶をしない、わざと物音を大きくする
㉚溜息ハラスメント
周囲にわざと聞こえるようにため息をつく
ひょっとすると、無意識のうちにやっていた行動が「ハラスメント」であることに、どきりとした方もいるかもしれません…これを機に、ご自身や周囲の行動を見直してみましょう。
ちなみに、昨年12月~今年1月に厚労省が従業員30人以上の企業・団体7780社を対象に実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」では、発生件数はパワハラ(64%)、セクハラ(40%)、カスハラ(28%)の順に多くなっています。
ハラスメントによって企業が受けるダメージとは
ハラスメントが発生すると、企業は以下のように深刻な問題を抱えることになります。
- 人事労務担当者の問題対応にかかる人件費が増える
- 企業のイメージダウンにより、営業や採用活動に支障が出る
- メンタル不調者・休職者・退職者の増加による人材不足に陥る
- 被害者となった従業員への損害賠償やこれに対する弁護士費用がかさむ
- 従業員の集中力・意欲低下によるミスの発生や生産性の低下による損失が出る
ハラスメント対策は中小企業の義務
2022年4月1日から労働施策総合推進法の改正により、中小企業に対してハラスメント防止対策を実施することが義務付けられました。
ハラスメントに対する企業方針の明確化と周知・啓発
「ハラスメント防止宣言」等の声明を発表し、社内外に浸透させることが必要です。
ハラスメント窓口の設置
「男女の相談員をおく」「個室を用意する」など、だれもが相談しやすい環境づくりが重要です。
ハラスメントが発生したときの迅速かつ適切な対応
トラブル発生時に慌てないために、事前に対応の手順や担当者を決めましょう。
実際のトラブルでは、主な対応として以下が必要です。
- ハラスメントの発覚
- 被害者・加害者・第三者への事実確認
- 適切な処置(会社・加害者の謝罪、加害者の減給・降格、配置換え・休職・退職など)、社労士・弁護士・医療機関など外部への相談
社労士からのアドバイス
ハラスメントにおける様々なトラブルから会社を守るためには、義務をしっかりと果すことが何より大切です。
国のルールを守って対策をしていれば、万が一従業員に訴えられても賠償責任が軽くなることがあります。
さらに対策したい時は
法律をしっかりと守った上で「万全な対策をしたい!」という場合には、以下を実践してみましょう。
ハラスメント防止研修の実践
気持ちよく働く職場をつくる前提として、従業員全員がハラスメントについての正しい知識を持つようになることが必要です。
研修はハラスメントへの関心・認識を高めることにもつながります。
社労士からのアドバイス
スポット社労士くんでは、社労士によるハラスメント防止研修【対面1時間・5万円~】を随時受け付けております。気軽にご相談ください。
社内交流を増やす
厚労省の調査によると、「上司・部下とのコミュニケーションが少ない/ない」と回答した職場はハラスメントが発生しやすいことが明らかになっています。
社員旅行といったイベントを企画したり、日ごろからランチを一緒に食べたり、お互いを知ることで差別や偏見を減らすことができます。
社内アンケートを取る
日頃の不満がハラスメントとして表れていることも……。
身近な人間関係、業務上の問題を定期的に見直しましょう。
匿名にすれば、従業員も回答への心理負担を減らすことができます。
メンタル計測システムを利用した予防
近年、音声や心情を入力し、スマホ等を使ってメンタル状態を簡単に計測するサービスの開発が進んでいます。
これを利用することで、従業員の心の健康状態を可視化でき、ハラスメントの防止に役立てることができます。
まとめ
ここまで、経営者・人事担当者の皆さまに知っていただきたい、ハラスメントの種類と対策について解説いたしました。
スポット社労士くんでは、ハラスメントに関するご相談を随時承っております。
「もっと知りたい」「うちの会社では何をしたらいい?」という方は、以下までお気軽にお問い合わせください。
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