手続きの事
2020.09.15
【社労士監修】給与締日や支払日を変更する場合の注意点は?実務ポイントを徹底解説
給与締日と支払日の変更を検討しているのですが進め方がわかりません。就業規則の条項に定めていて労働基準監督署に届けています。どのように進めればよいですか?
賃金に関することは就業規則に必ず定めなければならない内容で変更する場合も労働基準監督署に届出が必要です。
また、変更することを従業員に説明して不利益にならないように配慮しなければなりません。ポイントを詳しくご説明しますね!
賃金に関することは就業規則の絶対的必要記載事項
賃金に関することは就業規則で定めなければならない「絶対的必要記載事項」です。賃金規程や給与規程などで就業規則と別に定めていても問題ありません。その場合は賃金規程や給与規程が就業規則の付属規程となり付則などに明記するようにしましょう。付属規程とされたものは就業規則と同様に扱い変更のたびに届出が必要です。
【賃金支払の5原則】
賃金の支払いには守らなければいけない5つの決まりがあります。これを賃金支払の5原則といい次の5つになります。
1. 通貨払い
現金で支払わなければなりません。従業員の同意があれば振込みすることができます。
2. 直接払い
従業員本人に支払わなければなりません。病気などで受取が難しい場合を除いて、たとえ親権者であってもの代理の者に支払うことは認められていません。
3. 全額払い
全額を支払わなければなりません。強制貯金などは全額支払ったことになりません。所得税・住民税・社会保険料の控除および従業員の依頼による給与引きは認められています。
4. 毎月1回以上払い
毎月1回以上支払わなければなりません。2カ月分をまとめて支払うなどは違法です。
5. 一定期日払い
給与支払日は必ず特定の日を定めなければなりません。毎月4週目の金曜日などの定めは日にちが定まっていませんのでダメです。ただし月末日として定めることはできます。また、支払日が休日の場合は前後の日を就業規則で定めることができますが、前倒しして支払うのが一般的です。
給与締日や支払日を変更する場合は、「4. 毎月1回以上払い」を守りながら手続きを進めるよう注意しましょう。
例えば計算期間1日~末日:支払日翌20日から計算期間21日~20日:支払日当月末日に変更する場合で10月1日に就業規則を変更すると
9月給与:計算期間9月1日~末日:支払日10月20日
10月給与:計算期間10月1日~20日:支払日10月31日 ← 前回の支払日から10日間で毎月1回以上支払われているので問題ありません。
他にもパターンをだして変更した場合どうなるかを考えてみましょう。

パターン1のように給与計算期間だけを変更し支払日までが短縮する場合は不利益変更になりません。変更前の9月給与は満額、変更後の10月給与は10月1日~10月20日までの20日分の日割額を支給します。

給与計算期間も支払日も変更する場合は変更前の期間は満額、変更後は9月21日~9月30日までの10日分の日割額を支給しますので10月に2回給与が支給されます。

給与計算期間も支払日も変更する場合は変更前の期間は満額、変更後の10月給与では9月21日~9月30日までの10日分の日割額を支給します。次の給与支給日は11月20日ですから月1回の支払いはクリアしています。しかし、その間を10日分の給与で生活しなければならず社員から不満の声があがる可能性があります。
給与締日や支払日を変更する場合の注意点
前項で労働基準法の賃金支払のルールを確認し、いくつかのパターンを考えてみましたが、実際に変更するとなると従業員にも生活はありますからトラブルが発生する可能性もあります。
給与締日や支払日を変更する場合は次のような対策をして従業員に配慮しながら進めましょう。
・事前の説明を開催し社員の同意を得る。
・説明会から就業規則変更までの日数を余裕をもたせる。
・給与が減少する月と賞与支払月にあわせて変更する。
・無利子貸付などの生活の安定を図る手助けをする。
就業規則変更の手順
就業規則の変更は次の手順で行います。
1. 就業規則を作成する
2. 従業員代表の意見を聞く
3. 労働基準監督署に届出する
4. 変更した就業規則を周知する
所轄の労働基準監督署への届出は就業規則の変更日より前に行いましょう。届出と同時に通達などで社内に必ず周知しましょう。
就業規則変更の届出に準備するもの
届出する時には以下の3つをセットで提出します。
・就業規則(変更)届
・従業員代表の意見書
・新たな就業規則
○就業規則(変更)届の書き方
変更事項の記載部分に改正前・後の内容を記載します。書ききれない場合は別紙を添付することも可能です。

○従業員代表の意見書
従業員代表(労働組合がある場合は組合の代表)の意見を聞き「意見書」を作成します。
「特に意見なし」など必ず意見を記入してもらいます。仮に反対意見が書かれていても受付けしてもらえます。意見欄が空欄で代表者の捺印だけでは受付けされないので注意しましょう。
労働者の過半数を代表する者の選出方法も記載しますので、会社側から指名することのないように正しい方法で選びましょう。
給与の締切日や支払日の変更の説明会を従業員に対して実施しており、個別に同意書を回収している場合であっても、労働基準監督署に提出するのは従業員代表の意見書だけです。

就業規則変更の提出方法
就業規則変更の届出方法には3種類の方法があります。方法と注意点を確認しましょう。
1. 持参
労働基準監督署に持参します。提出用と受付印を捺印してもらう控えの2部を持参します。持参するのは人事担当者で問題ありません。会社控えにその場で受付印を捺印してくれます。
2. 郵送
郵送により届出を行う場合は、提出用と控えの2部と返信用封筒を同封して送ります。返信依頼の送付状と一緒に送れば1週間ほどで返信されてきます。
3. 電子申請
電子政府の総合窓口「e-Gov(イーガブ)」を利用すると電子申請することができます。すでに社会保険手続きなどで「e-Gov(イーガブ)」を利用している場合は初期設定が完了していますので便利です。また、各事業所単位ではなく本社一括で届出することもできます。

給与支払日の変更による社会保険の影響
給与締日を変更すると一時的に支払基礎日数が減ります。4月から 6月の給与は算定基礎の対象となりますが、支払基礎日数が17日未満の月は対象外です。
変更内容によっては算定基礎の対象外となりますので注意しましょう。その場合は対象月のみの平均を算出して報酬月額を算出します。

給与支払日の変更による資金繰りへの影響
また、パターン1のように賃金締日と支払日の期間が短縮する場合は経理部門との協議が必要です。社員の給与は金額が大きいことから資金繰りに影響するためです。
取引先の多くが末日払いで売掛金の回収が月末に集中している会社では給与支払日を末日から20日にすることで10日間のタイムラグが発生し資金ショートを起こす可能性も考えられます。
その場合は短期借入などで対応しますが、余分な利息を支払わなければならないので経費が増加します。毎月のことですので年間の費用が予想外に高額になることもあります。
給与計算の期間を変更したり、支払日を変更するのは大変なんですね。思っていた以上に色々な手続きがあって驚きました・・・。
賃金に関する変更事項は就業規則に記載されている重要部分ですから、手続きに間違いのないように注意しましょう。
変更が会社都合であることを考慮して、できるだけ従業員に配慮しながら進めると円滑に実施できると思いますよ。
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