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社員の事

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2020.07.23

企業が理解しておきたい健康診断のルール

 

会社は、雇用する労働者に健康診断を受けさせなければなりません。健康診断の実施は会社の義務であり、実施しないと罰則が科されます。

この記事では、健康診断のルールと、企業の「安全配慮義務」についてご説明します。

企業の健康診断とは、実施義務とは

企業は、どのような法律の根拠に基づいて、健康診断を実施させる義務を負っているのでしょうか。

労働安全衛生法で規定されていて「罰則もある」

労働安全衛生法第66条は、会社が、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければならないと定めています(*1)。

また、同法第120条の規定により、会社が健康診断を実施しなかった場合、50万円以下の罰金を科されます(*1)。

●労働安全衛生法第66条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。
●同第120条 次の各号のいずれかに該当する者は、50万円以下の罰金に処する。 第66条の規定に違反した者 (一部省略) 引用:労働安全衛生法(安衛法)|安全衛生情報センター

健康診断を受けさせなければならないのは「常時使用する労働者」</font color>

健康診断を受けさせなければならないのは、常時使用する労働者です。

常時使用する労働者とは、次の1、2の要件をいずれも満たす者です(*2)。

(1)期間の定めのない契約により使用される者であること

期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者

(2)その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること

正社員はもちろんのこと、パート、アルバイト、短期雇用者についても「名称に関係なく」上記の条件に該当するのであれば、健康診断を受けさせなければなりません。

そもそも健康診断とは何なのか</font color>

健康診断とは要するに「医療機関での検査」です。検査自体は、病気が疑われるときに医師が行う内容と同じです。

この「医師による健康診断」の検査内容は、労働安全衛生規則において定められています(*3)。

<健康診断の検査内容:労働安全衛生規則第43、44条>
●既往歴及び業務歴の調査
●自覚症状及び他覚症状の有無の検査
●身長(※)</font color>、体重、腹囲(※)</font color>、視力及び聴力の検査
●胸部エックス線検査(※)</font color>及び喀痰検査(※)</font color>
●血圧の測定
●貧血検査(血色素量及び赤血球数の検査)(※)</font color>
●肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTPの検査)(※)</font color>
●血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライドの量の検査)
●血糖検査(※)</font color>
●尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
●心電図検査(※)</font color>
(※)</font color>印をつけたものは、「定期健康診断」では、医師の判断によって省略することができます。
しかし「雇い入れ時の健康診断」では(※)</font color>印も実施しなければなりません。

健康診断の種類と労働者の特徴

健康診断のうち、主要なものは、「雇い入れ時の健康診断」と「定期健康診断」の2つです。また、それ以外にもいくつかの種類の健康診断が定められています。健康診断に種類があるのは、該当する労働者の特徴によって、検査メニューや実施頻度を変えているからです。

これらをまとめて「一般健康診断」と呼びます。

<一般健康診断の種類 / 該当する労働者 / 実施頻度>

●雇い入れ時の健康診断:労働者を採用したときに実施

●定期健康診断:1年以内に1回実施

●特定業務従事者の健康診断:多量の高温または低温の物体を取り扱う業務やエックス線などの有害放射線にさらされる業務などの「特定業務従事者」に、6カ月以内に1回実施

●海外派遣労働者の健康診断:海外に6カ月以上派遣する労働者に、派遣するときと帰国させたときに実施

●給食従業員の検便:企業などの食堂や炊事場で給食業務をする労働者を採用したとき、または、別の部署の労働者にこの業務をさせるとき

上記の一般健康診断の他に、特殊な健康診断もあります。

次に挙げる3つの健康診断は「雇い入れ時、配置替え時、6カ月以内に1回」行なわなければなりません。

●特殊健康診断

 対象労働者:有機溶剤や鉛を使った業務をする労働者、高圧室内業務や潜水業務をする労働者、石綿の粉塵が出る場所で業務をする労働者など

●じん肺健康診断

 対象労働者:粉塵が出る場所で業務をする労働者や、過去にその業務に従事していた労働者など

●歯科医師による健康診断

 対象労働者:塩酸、硝酸、硫酸など歯にとって有害になるガスや蒸気が発散する場所で業務をしている労働者など

受診後の手続き

事業者による健康診断は、労働者に「受けさせるだけ」では終わりません。それでは十分な健康維持効果が得られないからです。

企業などは、労働者1人1人の「健康診断個人票」を作成し、健康診断の結果をそこに記載して保存しなければなりません。個人の健康や病気に関する情報は重大な個人情報なので、漏洩がないよう十分注意しましょう。

そして事業者は、健康診断の結果を労働者に知らせなければなりません。多くの医療機関は、健康診断の結果を記した用紙を2枚用意して、労働者本人と会社に渡します。

50人以上の労働者を使用している事業場の分は、定期健康診断の結果を労働基準監督署に提出しなければなりません。

異常所見が見つかったら

健康診断は、あくまでも検査です。病気を発症していたり病気になりそうだったりしても、治ることはありません。

健康診断で異常所見が見つかったら、会社は医師に「異常所見についてどう対処したらよいか」といった意見を聞かなければなりません。

医師に意見を聞き、必要があれば、対象の労働者を異動させたり、労働時間を短くしたりといった措置をとる必要があります。特定の職場にいることで健康が害されている労働者を、そのまま働かせることはできず、よりよい環境で働かせる必要があるからです。

健康診断の結果、「健康の保持に努める必要がある」労働者がいたら、その労働者に対して、医師や保健師による指導を受けさせなければなりません。

会社には労働者の健康に配慮する義務があるので、「健康診断のあとのアクション」が重要になるのです。

費用は会社が負担します

一般健康診断は医療機関で検査をしますが、これは「病気の治療」ではないため、医療保険を使うことができません。つまり、健康診断を実施した医療機関に支払うお金は、全額負担となります。

一般健康診断の費用は、事業者が全額負担します。労働者に負担させてはいけません(*4)。

一般健康診断の費用は、医療機関によってまちまちですが、大体1人当たり5,000円から15,000円の間に設定していることが多いでしょう。

健康診断は1時間ほどかかりますが、その時間の賃金を支払うかどうかは、事業者と労働者の間で決めます(労使協議で定めます)。

ただし、労働基準監督署は「健康診断は事業の円滑な運営に不可欠なものなので、賃金を支払うことが望ましい」との見解を示しています(*4)。

企業が健康診断に要する時間分の賃金を支払う方法としては、例えば、勤務時間中に労働者に「中抜け」してもらって、医療機関で健康診断を受けさせて「賃金を減額しない」方法があります。

協会けんぽに加入している会社

中小企業などは、公的医療保険として全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)に加入することが多いでしょう。

協会けんぽに加入している事業者が、協会けんぽ経由で健康診断を実施すると、次のような「特典」を受けることができます(*5)。

・協会けんぽが健診費用の6割を補助する
・大腸・胃・肺・乳房・子宮頸の5種類のがん検査も同時に受診できる
・健康診断後に生活習慣を改善する健康サポート(特定保健指導)を無料で受けることができる

安全配慮義務について

企業の経営者は、労働者に健康で安全に働いてもらえるように労働環境を整備していかなければなりません。

事業者の、労働者の安全に配慮する義務は、労働契約法第5条に規定されています(*6)。これを安全配慮義務と言います。

労働契約法第5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。 引用:労働契約法

安全配慮義務を怠ることで労働者が健康を損なった場合には、企業は、損害賠償責任を負うこともあります。改めて、本記事でご説明した健康診断のルールに基づいて、自社の状況を見直してみてはいかがでしょうか。

*1:労働安全衛生法(安衛法)|安全衛生情報センター

*2:常時雇用する労働者 – 東京労働局雇用環境・均等部

*3:e-Gov法令検索

*4:健康診断Q&A – 高知労働基準監督署

*5:2020年健診受診の手続き(保存版)- 全国健康保険協会 東京支部

*6:労働契約法

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