無料ご相談・お問合わせはお気軽にお申し込みください。

【受付】平日10:00-19:00

人事労務のご相談03-6272-6183

お手続き・入力方法について04-7197-1100

LINE

お問い合わせ

いい会社をストーリーする。

スポット社労士くん

News

NEWS

NEWS

2020.09.12

話題のニュース3選から労働問題を解説

麻生太郎副総理が新聞記者に「140日休まないで働いたことないんだろう。140日働いたこともない人が、働いた人のこと言ったってわかんないわけですよ」と言ったことが騒ぎになりました(*1)。

この発言が物議を醸したのは「140日連続勤務をしてから意見しろ」と言っているように聞こえるからです。

それが曲解だとしても、少なくとも麻生副総理は、140日連続勤務を否定しているわけではありません。しかもその相手は、労働者である新聞記者です。だからやはりこの発言は問題をはらんでいます。

そこで、今回は「大臣による140人連続勤務発言」と合わせて、世間で話題になった「芸人の最低賃金以下の報酬」「女性芸能人のSNS恫喝」という出来事について、それぞれどのような労働問題につながるのか考察してみました。

*1:https://jisin.jp/domestic/1886695/

【事例1】なぜ大臣は労働者に140日勤務を否定しなければならないのか

労働基準法第35条は使用者に対し、労働者に週1日以上の休日を与えるよう義務づけています(*2)。

新聞記者は会社員なので、労働基準法第35条で守られるべき労働者に該当します。

そして大臣は普通の人より法律を厳格に守らなければなりません。なぜなら、法律をつくる重い責任を担っているからです。

だから大臣が労働者に「140日休まないで働いたことないんだろう」と挑発的なことを言ったことが大きな問題になったのです。

政府は一生懸命働き方改革を推進しています。働き方改革とは、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることです(*3)。そのためには、長時間労働も是正しなければなりません。

長時間労働を是正するには、企業経営者など、働かせる側の意識を変えなければなりません。

つまり、働き方改革の実態は「働かせ方改革」といえます。

企業経営者などに働かせ方改革を推進させなければならない大臣は、少なくとも労働者に対しては、140日連続勤務を否定する発言をしなければならなかったでしょう。

*2:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000049#D

*3:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html

【事例2】最低賃金以下のお笑い芸人が会社員だったら大問題

「億」を稼ぐ人がいる一方で、時給89円で働く人もいるのが、お笑い芸人です(*4、5)。

あまりに安い給料は最低賃金法に違反するのに、それでも芸人の安い給料が法律的な問題にならないのは、彼らが労働者ではないからです(*6)。

もし芸人が労働者だったら、つまり、芸人の事務所の会社員として雇われていたら、安い時給は大問題になります。

最低賃金法第40条は、使用者が労働者に最低賃金以上の賃金を支払わなかったら、50万円以下の罰金に処すと定めています(*6)。

*4:https://www.mbs.jp/mbs-column/daijyoubu/archive/2018/11/08/014708.shtml

*5:https://www.youtube.com/watch?v=wdaqTRoYIpE

*6:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=334AC0000000137

会社員でなくても大問題

芸人たちが労働者でないのなら、彼らはどのような身分で働いているのかというと、個人事業主です。

個人事業主は、発注先の会社と業務委託契約を結びます(*7)。個人事業主も業務委託契約も最低賃金法の対象から外れるので、個人事業主が安いお金で仕事を請負っても問題はありません(*7)。

しかし、個人事業主でも、労働関係の法律で守られることがあります。

それは、発注先企業から命令や指示が出ていたり勤務時間や勤務場所が定められたりしていて、個人事業主の「労働者性」が認められたときです(*7)。

形態が個人事業主でも実態が労働者と何ら変わらなければ労働関係の法律が適用されるので、あまりに安いギャランティは最低賃金法に違反する可能性があります。

また、芸人と発注先企業(所属する芸能事務所)が契約書を交わしていないことも、違法性をはらみます(*8)。

個人事業主と発注先企業の関係は、下請取引に該当することがあり、下請法の適用を受けるからです(*9)。下請法は親事業者(発注先企業)に重い義務を負わせたり、禁止行為を定めたりしているので、乱暴な働かせ方はすぐに同法に違反するでしょう。

*7:https://offers.jp/media/money/a_1152#outline-2

*8:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/skillup/00009/00066/

*9:https://hilltop-office.com/contents/shitaukehou.html

【事例3】店主が客に恫喝されたときの労働問題

女性タレントがSNSを使って飲食店の店主を恫喝したことが、ワイドショーを賑わせました。女性タレントは世間の集中砲火を浴びて芸能界引退に追い込まれ、さらに店主側から損害賠償裁判を起こされて事件化しました(*10、11)。

もしこのケースで被害者である店主が労働者だったら、つまり、飲食店会社に雇用されていたら、労働問題に進展しかねません。

*10:https://bunshun.jp/articles/-/38877

*11:https://news.nifty.com/article/entame/showbizd/12104-153807/

偽計業務妨害罪や恐喝罪は別の問題

SNSを使った犯罪の1つに、偽計業務妨害罪があります。虚偽の内容を流して飲食店の業務を妨害すると、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます(*12)。

そして恫喝は、恐喝罪、強要罪、脅迫罪になる可能性があります(*13)。

ただ、偽計業務妨害罪も恐喝罪なども、飲食店の店主の労働問題とは別の話になります。

ここでは、店主が飲食店を経営する会社の社員(労働者)で、客からのクレームにより精神的なストレスを受けたときの労働問題を考察していきます。

*12:https://www.t-nakamura-law.com/column/%E5%81%BD%E8%A8%88%E6%A5%AD%E5%8B%99%E5%A6%A8%E5%AE%B3%E7%BD%AA%EF%BD%9C%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%84sns%E7%AD%89%E3%81%A7%E8%B5%B7%E3%81%93%E3%82%8A

*13:https://刑事弁護士に相談.com/soudan/%E5%88%91%E4%BA%8B%E5%BC%81%E8%AD%B7%E5%A3%AB%E3%81%A8%E7%9B%B8%E8%AB%87/%E6%81%AB%E5%96%9D%E3%81%AF%E5%88%91%E4%BA%8B%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%8B

労働者の安全に配慮する義務と労災

飲食店会社と店主(労働者)は、雇用契約を結んでいます。雇用契約は雇用契約法で規定されていて、同法第5条には「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と書かれています(*14)。

使用者(会社)には、労働者の安全に配慮する義務が課されています。その安全には、身体的な健康だけでなく精神的な健康も含まれています。

店主が客から激しいクレームを受け、それがストレスになって心の病を発症した場合、労災が認定される可能性があります。

労災は、業務遂行中に業務が原因となって起きる病気やケガが対象になるからです。

*14:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=419AC0000000128

労災と認められたときの補償内容

国の労災保険制度では、業務中に起きた病気やケガを労災と認定し、労災認定された労働者に対して補償を行います(*15)。

労災補償には、治療費(療養費)が全額支給されたり、休業中の賃金の一部が支給されたりします。重い障害が残れば、年金を受け取ることができます(*16)。

*15:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/index.html

*16:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000154431.html

店主は飲食店会社に損害賠償を請求できるのか

労災認定や労災補償は、国の仕組みで労働者を守る方法です。

では、労災が起きるような労働環境をつくっていた会社はおとがめなしなのでしょうか。もちろんそのようなことはありません。

例えば、店主(労働者)が客からのSNS攻撃で過剰なストレスを受け、店主が飲食店経営者に相談しても何の対策も講じてもらえなければ、飲食店会社の安全配慮義務違反が疑われます。

店主が客からのクレームによってうつ病を発症すれば、店主は飲食店会社を相手取り、損害賠償裁判を起こすことができます。

過去には、労働者がうつ病を発症したのは企業が安全配慮義務を怠っていたことが原因だったとして、裁判所が6,000万円の損害賠償を命じたこともあります(*17)。

損害賠償の範囲は広く、次のようなものが対象になります。

・精神科を受診したら、その治療費

・うつ病によって会社を休んだら、その間得られなかった給与

・精神的な苦痛を受けていたら、その慰謝料

・うつ病を発症したことによって、将来得られるはずの利益

*17:https://www.fukuoka-roumu.jp/226/226010/

ポイントは「労働者対使用者」になっていること

客によるSNS恫喝であっても、労働者が被った被害は「労働者(店主)対使用者」の問題になる点に注意してください。「労働者対客」ではありません。

しかしこのままでは、安全配慮義務違反が疑われるとはいえ、使用者の損害が大きくなってしまいます。そこで使用者は、SNSで店主を恫喝した客を相手取り、損害賠償裁判を起こすことができます。

【まとめ】労働者自身の行動がカギ

マスコミが注目した「大臣による140人連続勤務発言」と「芸人の最低賃金以下の報酬」と「女性芸能人のSNS恫喝」を題材にして、労働問題を考えてみました。

働く者と働かせる者ではどうしても働く者のほうが弱くなってしまうので、労働者はさまざまな法律で守られています。しかし、被害に遭っても労働者が何もしなければ、救済は受けられません。

労働基準監督署に通報したり弁護士に相談したりして初めて、法律に基づいて適切に対処されるはずです。

一覧へ戻る

CONTACTお問い合わせ

サービスについてのご質問やご相談など、まずはお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせフォームはこちら