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基礎知識

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2021.06.04

借上社宅制度のメリットって?導入時は労使協定書の締結も忘れずに

 

新卒や中途の採用で「社宅はありますか?」と聞かれることがあるのですが、我が社にはなくて・・・社宅を準備するとなると費用も高額です。なにかよい方法はないでしょうか?

 

 

社宅を自社で準備したり、アパートなどを一棟借上するのは資金的な負担も大きいですよね。
通常の社宅制度より負担の軽い「借上社宅制度」というものがあります。制度の概要や経済効果、実際に制度を導入する際の注意点などをご説明しましょう。

 

借上社宅制度とは?従来の社宅制度とは何が違う?

借上社宅制度とは、従業員が自身で選んだ民間の賃貸物件を会社名義で社宅として借りる制度です。会社名義で借りますので、会社が自社で賃貸契約した物件を社員に貸すという扱いになります。

賃貸契約書の又貸しに該当することはなく、賃貸物件を契約するときに「法人契約します」といえば大半の物件は借りられます。なかには「法人契約を希望」とする物件もあるほどです。

従来の社宅制度は、会社が不動産を所有したり、法人契約でアパート一棟を借り上げて通常の家賃相場より安く社員に社宅として貸すものでした。

社員からすれば、10万の物件に5万で住めるかわりに、近隣は会社関係者ばかりという環境で、会社をでても会社の人間関係が続くようなところがありました。

終身雇用制度ではその環境に適応する社員も多くいましたが、人材の流動化が進んできている現在では「仕事とプライベートは別」と考える風潮から、社宅にマイナスイメージを持つ社員が増えています。

会社側からみても、事業をとりまく経済環境の変化のスピードは速くなっており、事業の統廃合から人員の増減も見込まれることから、自社で過剰な不動産を所有することや、長期契約となるアパートの一棟借上げはリスクと考えるむきもあります。

このような会社側の事情と従業員の意識変化から借上社宅制度が注目されているのです。

会社・従業員に対する経済効果(メリット)

借上社宅制度は会社や従業員にどのような経済効果をもたらすのでしょうか。月給40万の社員に10万の社宅を貸した場合を例に、借上社宅制度を活用したときの会社と従業員それぞれの経済的なメリットをご説明しましょう。

【会社側の経済効果】

会社側は会社負担分の家賃と同額だけ従業員の月給をさげて、人件費で処理されていた費用を社宅家賃として処理します。会社負担分の家賃は現物給与になると思われるかもしれませんが、家賃の半額までは給与所得としての課税対象外ですので現物給与とはならず、社会保険料の算定の対象ともなりません。そのため、会社が負担する社会保険料をおさえることがきます。

仮に東京都の協会けんぽに加入している35歳の従業員の月給を5万さげると標準報酬の等級は下の図のようになり、健康保険と厚生年金の保険料がそれぞれさがります。

健康保険・厚生年金保険の保険料額表

出典:協会けんぽ|令和3年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表【東京都】

変更前後を比べると、

・変更前:健康保険20,172+厚生年金37,515=57,687

・変更後:健康保険17,712+厚生年金32,940=50,652     差額は7,035円

仮に月給を5万さげることで毎月約7千円の社会保険料が削減できれば、年間で約8万5千円の経費削減になります。

同じ条件で社員10人に借上社宅制度を導入すると年間で約84万を超える経済効果が得られるのです。

借上社宅サービス福利厚生

引用:福利厚生freee|借上社宅サービス福利厚生freee借上社宅サービス

また、労働保険料や雇用保険料は支払額に料率をかけて計算しますので月給に比例して削減されます。

【従業員側の経済効果】

従業員の経済効果も確認してみましょう。健康保険料と厚生年金保険料は従業員と会社が折半して負担しますから、会社側と同様に月給を5万さげることで毎月約7千円の社会保険料が削減できます。年間で約8万5千円保険料が安くなるのです。

また、所得税や翌年の住民税、給与に雇用保険料率をかけて計算する雇用保険料も月給をさげることで減ります。

このように借上社宅制度を活用して基本給を家賃の半額さげることは社会保険料や税金等の負担軽減につながるのです。

借上社宅サービス福利厚生

※1税金等は所得税・住民税および雇用保険料です。

引用:福利厚生freee|借上社宅サービス福利厚生freee借上社宅サービス

借上社宅制度を活用していない場合は、手取り給与は多いものの、そのなかから家賃10万全額を支払うため、上の図のように家賃支払後に手元に残る額は少なくなってしまいます。

このように例をあげて計算してみると借上社宅制度は会社だけでなく従業員にとっても経済効果があることがよくわかります。

税務面・社会保険料面のポイント

借上社宅制度を活用した場合の経済効果をご説明しましたが、税務面と社会保険料面のポイントを整理しておきましょう。

【税務面】

・所得税は毎月の給与に課税されますので、基本給が減額されれば毎月の所得税が減ります。

・家賃の半額を従業員が負担することで社宅賃料が現物給与とならず課税対象外となります。

・住民税は前年の所得をもとに課されますので翌年度の住民税が軽減されます。

【社会保険料面】

・月給が減ることで固定的賃金の変更となり、変更額が大きければ随時改定で標準報酬月額がさがり、4カ月後から保険料が減額されます。変更額が小さい場合も翌年4月・5月・6月の報酬月額をもとに行われる定時改定でみなおされます。

・雇用保険料は給与額に雇用保険料率をかけて保険料が決まりますので、月給がさがれば保険料も比例して減額されます。

・法人税の計算では給与減額分は人件費から減りますが、社宅家賃として損金計上できます。損益計算上はどちらも損金であり、支払科目が振り替わっただけとなります。

借上社宅制度を導入する際に会社が留意すべき点

借上社宅制度を導入する際に会社が留意すべき点をいくつかご紹介します。導入を検討する際には(1)から(6)のような事務作業の負担が増えることや、万一のリスクを理解して進めましょう。

【留意点】

(1) 賃貸する物件の家主が個人の場合は前年に支払った不動産賃料や更新料などの金額を記載した支払調書の作成が必要です。毎年1月に所轄の税務署に申告しなければなりません。支払調書には家主のマイナンバーを記載しますので、家主のマイナンバーの管理が必要となります。

(2) 社員が休職した場合で、傷病手当金や労災補償などがなく本人から回収できないときは家賃全額を会社が負担することになります。連帯保証人を設定していれば保証人に請求することはできます。

(3) 社員名義で借りている賃貸物件を法人名義に変更する場合は手数料がかかることがあります。

(4) 賃貸物件を法人契約するためには現在事項証明書や直近の決算書の提出を求められることがあります。保証会社との契約が必須であったり、法人契約であれば保証会社との契約は不要とする物件もあり、個別対応が必要で業務が煩雑になる可能性があります。

(5) 従業員の社宅負担額が対象物件の50%以上になると給与所得として課税対象になります。また、社会保険料の算定にも影響します。

(6)借上社宅の運用については個人負担割合や共益費などの扱い、退去時の費用負担などを「社宅管理規程」として定めておくとよいでしょう。その場合は転勤による社宅の借りかえの費用や引越し費用、物件の下見にかかる交通費や宿泊費、赴任費用なども併せて定めておくと経費処理でき給与課税の対象外となります。

借上社宅制度の疑問

借上社宅制度の疑問のよくある疑問をご紹介します。参考にしてください。

【疑問点】

(1) 社員が好きな物件を選ぶことが可能なのでしょうか?

法人契約できる物件であれば社員が自由に選定できます。規程で広さや家賃の上限を定め一定の制限をすることも可能です。

(2) 駐車場代はどのようなあつかいになるのでしょうか?

自家用車は個人の所有物 で全社員が所有しているわけではありませんので自己負担とする会社が多いでしょう。その場合は駐車場代も含めて会社が賃料を支払い、個人負担の社宅料金と駐車場代を給与引きします。

(3) 社員が退職した場合、借上社宅はどうなるのでしょうか?

退職する社員には退去してもらい原状回復費用の精算をします。ただし、法人契約ですので次に住む社員が決まっている場合は賃貸契約を継続することも可能です。その場合は管理会社に居住者変更の届出をするなどの手続きが必要となります。

(4) 借上社宅制度と住宅手当の併用は可能でしょうか?

福利厚生として併用は可能ですが、運用については規程などで明確にしましょう。併用する場合は単身赴任者に限り両方を利用できるなど細かな条件を定めるとトラブルをさけられます。

(5) 転勤などで一時的に借上社宅を2物件借りるような場合の社員負担額はどうなるのでしょうか?

2物件分の自己負担を社員に求めることはできません。規定で「旧物件の賃料をもとに計算する」など明確に定めておくとよいでしょう。

(6) 借上社宅の賃料を支払った場合の会計処理でどのようになるのでしょうか?

まとめて支払った場合でも会社費用と社員負担額を別々の勘定科目で処理します。

例えば、社宅家賃10万(会社負担5万、社員の自己負担5万)・駐車場代1万の場合

[家賃支払時の仕訳]

社宅家賃5万 / 預金11万

仮払金(社員の自己負担5万と駐車場代1万)6万 /

[給与支払時の仕訳]

給与35万 / 預金21.8万

     / 社会保険料5.1万

     / 所得税等2.1万

     / 仮払金(社員の自己負担5万と駐車場代1万)6万

決算では仮払金から社員に対する未収入金に振替します。

賃金控除の労使協定書も忘れずに作成しましょう!

労働基準法では「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定められています。例外として「法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合」は給与引きが認められています。

そのため社宅賃料の個人負担分だとしても「賃金控除の労使協定」を結ばなければなりません。 借上社宅制度を導入する際は賃金控除の労使協定書も忘れずに作成しましょう。

【記入例】

協定書

出典:神奈川労働局|労働基準法関係【参考書式(様式/記載例)】

 

借上社宅制度は会社にも社員にもメリットがあるのですね。留意点を考慮しながら検討してみようと思います。

 

 

導入するときは社宅管理規程を作成するとよいでしょう。また、家賃の自己負担額を給与引きするための労使協定書の締結を忘れずにしましょう。

 

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