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採用

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2021.10.08

【まとめ】リファラル制度導入時のポイント ~導入企業例、職業安定法、社会保険における注意点 ~

 

 

人材難でなかなか人が採用できません。せっかく入社しても、ミスマッチで退職してしまうこともあります。我が社の求めるスキルのある人で、求められる役割に納得した人を効率的に採用する方法はないのでしょうか?

 

 

日本でも採用方法として多くの企業が導入を始めている「リファラル採用制度」があります。リファラル採用制度は人事部員ではなく、現場の社員が、自分たちの求める人材を会社に紹介する制度です。
社員の知人や友人、同業者など幅広く声をかけることができるので、転職希望者など表に出ている人材だけでなく、潜在的な人たちも対象とすることができます。
新規採用者も入社後の仕事について詳しく知ることができるので、ミスマッチが起こりにくいのが特徴です。

リファラル採用制度についてご説明しましょう。

 

リファラル採用とは

リファラル採用とはアメリカで広く取り入れられている採用方法で、自社の社員や取引先、知人などから採用する人を紹介してもらう制度です。

このように説明すると、古くからある縁故採用のことだと思われるかもしれません。

しかし、リファラル採用は、たまたま良い人材がいたから、条件に合う人がいたからと紹介される縁故採用とは違います。

リファラル採用は企業が人材獲得の戦略として行うものです。

リファラル採用では候補者のスキルや適性、経歴などを鑑みて合否をだします。縁故のように紹介されたら断りづらいといった忖度はありません。

そのため、人材獲得が難しいベンチャー企業や新規事業を立ち上げる企業で即戦力を求める際に有効な採用方法といえます。

どれくらいの企業が採用しているのか(普及度合い)

リファラル採用を採用する企業は増えており、マイナビが発表した「中途採用状況調査(2021年版)」ではリファラル採用を導入している企業は全体の56.1%でした。

 

出典:マイナビ|中途採用状況調査(2021年版)

低コストで求める人材とマッチングしやすいことや、ミスマッチが起きにくく離職率が低いことから、大手企業でも本格的に取り組む企業が増えています。

導入している企業をご紹介しましょう。

日鉄ソリューションズ株式会社では幅広いIT人材に出会う新たな方法として2021年4月よりトップコミットメントのもと、リファラル採用に本格的に取り組みはじめました。

既存の採用活動では出会えない幅広い人材との出会いを求めて、社員からの紹介でのリファラル採用を進めています。

参考:https://i-myrefer.jp/media/case/nipponsteel-solutions/

博報堂DYグループではDX人材獲得のためグループ3社合同で、転職市場で見つからない潜在層の獲得のためリファラル採用を始めています。

人材獲得競争が激化する中で、専門性の高い人材の獲得を目指し、新たな採用手法として、社員一人ひとりがリクルーターとなって、現場の求める人材の獲得を進めているのです。

参考:https://i-myrefer.jp/media/case/hakuhodody/

帝人株式会社では自社にない専門性を持つ人材を求めリファラル採用を導入しています。

求めるスキルなどをもった人物とのマッチングを実現するため、募集ポジションに近い仕事をしている社員からの紹介を受け付けています。

今後は新卒採用にもリファラル採用を導入し、内定者に後輩を紹介してもらう形で進める予定のようです。

参考:https://i-myrefer.jp/media/case/teijin/

このほかにもNTT西日本やリコーアシックス日産などの大手企業でもリファラル採用を実施しています。

企業規模に関係なく導入されていることから、採用が難しいベンチャー企業の採用手法としてだけではなく、求める人材の獲得方法となっていることがうかがえます。

職業安定法上の注意点

導入が進むリファラル採用ですが、職業安定法上で注意しなければならない点があります。

ご紹介したマイナビの調査でも一定数の企業が「インセンティブを金銭で支給している」と回答しています。

このインセンティブは「会社に人を紹介して得た報酬」です。

職業安定法第30条では「有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない」としています。報酬を得て人を紹介するには有料職業紹介事業の許可が必要なのです。

また、職業安定法第40条では「労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事する者または募集受託者に対し、報酬を与えてはならない」ともなっています。

従業員が有料職業紹介事業の許可を得ていることはないと思いますから、インセンティブを支払うのは違法となってしまいます。

ただし「賃金・給料またはこれらに準じるものを支払う場合、または報酬の額について事前に厚生労働大臣の認可を得ている場合を除く」と例外も認められています。

就業規則で「リファラル採用に関するインセンティブを賃金や給料の形で支払う」ことを定めて、労働基準監督署に届出しておけば問題ないのです。届出していないと、職業安定法第40条の違反となり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金となりますので注意しましょう。

インセンティブが社会通念上相当と認められる金額であることも重要です。

有料職業紹介事業者から紹介をうけた場合の紹介料は、採用した社員の年収の30%が相場です。これは事業者の額です。

社員へのインセンティブは10万程度としている企業も見受けられますので報酬金額が高額にならないように気を付けましょう。

社会保険料上の扱い

リファラル採用の紹介者となった社員へ支払うインセンティブは「報酬」となります。報酬は社会保険料の等級に影響することがあります。

知人を紹介して規定で定められた額のインセンティブを「紹介料」の名目で給与として受け取った場合は、固定的賃金の変更には該当しませんので月額変更届の対象外です。

しかし、昇給など固定的賃金の変動の時期と重なってしまうと、標準報酬月額を総支給額で計算するため影響してきますので注意しましょう。

出典:日本年金機構|月額変更届の記載例

また、報奨金として賞与と認識するのであれば、賞与支払届の提出が必要となりますので、漏れのないようにしましょう。

リファラル採用を導入するときに規程で定めるべきこと

リファラル採用を導入するにあたり、職業紹介法や社会保険料など注意すべき点をご説明してきましたが、実際に運用していくと、リファラル採用の活動を行う社員の勤務時間の扱いなど様々な問題がでてきます。 それらは事前に規定で定めておかねければなりません。

規定には次のような点を定めるようにしましょう。

1.リファラル採用活動の制度説明と活動状況を把握できる体制を定める

リファラル採用の活動を始める前に職業紹介の申請書を提出するよう制度化しておきましょう。

リファラル採用の活動とはいえ、社員の誰でも採用活動を自由に行ってよいわけではありません。活動する社員には制度の目的を理解してもらうための研修を行うなどのフォローも必要です。

また、採用活動は社員に一任するのではなく、進捗状況などを定期的に報告するように定めておくとよいでしょう。

制度の理解不足で求職者にも正しい情報が伝わらないと、入社した後にミスマッチがおこり離職に結びついてしまいますので注意しましょう。

2.リファラル採用活動に要した時間の扱い

採用活動に要した時間を会社が把握できるようにしましょう。場合によっては業務時間外に採用活動を行うこともあります。その場合は時間外業務の申請をするなり、業務命令として採用活動を行うかたちにしておきましょう。

時間外労働時間は通常の残業時間と同じ割増率で残業代を支払えば問題ありません。

3.リファラル採用活動の報酬、支払方法と時期

採用活動の報酬額や支払方法、支払時期などを明確にしておきましょう。

例えば、

リファラル採用活動で求める人材を採用できた場合、紹介者に一人当り100,000円の報酬を紹介手当として、新規採用者の入社月の翌月給与で支払う。

といった具合です。

賞与として支払うのであれば

リファラル採用活動で求める人材を採用できた場合、紹介者に一人当り100,000円の報酬を報奨金として、新規採用者入社後の夏期賞与もしくは冬期賞与の支給日に支払う。

といった定め方も有効です。

4.リファラル採用活動に要した費用の扱い

リファラル採用活動に要した費用の扱いと精算について明確にしておきましょう。採用活動ですので各部門の経費ではなく、人事部門の経費で処理するなど社内ルールを徹底しましょう。

また、使用された経費が適切であるかを確認するため事前申告制にするなどのルール作りも必要です。

採用活動に要した費用とはいえ、内容によっては交際費や会議費に該当することもあります。税務上の扱いも変わってきますので注意しましょう。

上記の内容を規定で定めたら、労働者代表の意見書を添えて労働基準監督署に届出するようにしましょう。

就業規則の変更手続きについてはこちらの「就業規則の基礎知識」で詳しく解説していますので参考にしてください。

 

リファラル採用活動という方法は、求める人材を獲得する方法として有効ですね。現場の求める人材が人事部門では把握しきれないこともありミスマッチの原因となっていましたから、社員が求める人材を直接スカウトできる制度は画期的ですね!

 

 

そうですね。人事部門だけで採用活動をすると各部門の求める人材が把握できておらず、ミスマッチが起こることもあります。
リファラル採用活動はより現場の声を反映した人材獲得ができますから、検討しても良いかもしれませんね。

 

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